青田恵一の現代書店学 『よみがえれ書店』『書店ルネッサンス』『たたかう書店』 青田コーポレーション代表 青田恵一 「出版ニュース」コラムより 『出版ニュース』に書店関連のコラムを書き始めて3年になる。そのなかから、「よみがえれ書店」シリーズを紹介した三つのコラムをこのページでご紹介することにしたい。 私がこの業界で過ごすようになって30年が経つ。キッカケは、学生時代、中野の明屋書店にアルバイトとして入ったことだ。この店での6年間は、がむしゃらに働いた。そして、基本というものを、みっちりたたきこまれ、かつ、自分にたたきこんだ。このとき、下積みで得られた自信らしきものが、その後、八重洲ブックセンター、ブックストア談時代に、何がしかの力になったと思う。 ざっといえば、担当者、店長、本部の事業推進を、おおむね10年単位で過ごせた。このことは私にとって幸運だった。その結果、売場のノウハウを学んでから店長、店づくりの手法をつかんでから本部の実務責任者、というように段階を踏むことができたのである。 本部では、店舗サポート、新規店出店、統一仕入、新規事業開発、ビデオ・CD管轄など、ほとんどの業務に関わった。そして、独立。今後は、これまでの経験を活かし、書店・出版コンサルタントとして、業界活性化に寄与できることを模索したいと考えている。 1.『よみがえれ 書店 ― V字回復へのヒント ― 』
よみがえれ書店 ―V字回復へのヒント ― <自己紹介にかえて> その第1は、いわゆるリストラによるこれ以上の書店荒廃をなんとか防止できないか、という思いであった。健闘する店がある一方で、かなりの店が読者流出と売上ダウンにより、このリストラに走った。その結果、店頭は荒れ、そしてサービスは低下した。誰もが、これではこの先、書店はいったいどうなるのか、と不安を感じている。リストラはなぜ起こるのか? それは、書店経営者が、これから先も状況が悪化するとみているからにほかならない。この事態を乗り切るには、ノウハウなどの“ソフト”構築による書店改革 ―― これ以外に道はない。さまざまな書店にどこまで有効かという問題は残るにしても、少しでも可能性があるなら、その方法を提示したかった。 第2は、売上不振に苦しむ書店人への応援歌として、である。多くの書店ではノウハウを持ったベテラン書店人が減少し、残った担当者は、何をどうしてよいのかよく分からなくとも、かろうじて日々の仕事をこなしている。この本は、読者の固定客化や売上の増大を図るための、基本的考え方と方法を述べたものである。40坪の規模からメガ店までの書店実践から、売上にとりプラス要因と思われるものを記したつもりだ。といっても大層なものは何もない。ただ、苦闘する全国の書店人に、たとえわずかでも、バックアップになればと考えたのである。 第3は、経営本部と店頭現場の「相互理解」を確立してほしいこと。現在、本部と店舗、経営層と現場の溝が広がり、“共通言語”が消えつつある。その結果、相互不信が増し、経営者は現場の軽視、店頭現場は経営への失望、という悪循環が生まれた。この解決のために、できるだけ “共通言語”を使うことで、経営層には現場感覚が、店頭現場の方々には経営のスタンスが、少しでもつかめることを追及した。 ともあれ、読者増大のノウハウを確立し、経営と現場が一体化して取り組めば、書店の未来は必ずしも暗くないことを、この本を通じて訴えたいと思う。 近々、第2弾を予定している。つぎのテーマは、書店の「進化」である。ベースとして書店は進化してきた、という視点に立ち、どこがどう進化したのかを、じっさい全国で取り組まれている店づくりから検証するつもりだ。そして、できるものなら、書店に取り付く「負のイメージ」を、少しでも払拭したい。文章の具体的テーマは、進化する書店、ストア・コンパリゾン(他店調査)、書店からみた出版営業への提案、書店の未来、電子ペーパーの衝撃などである。 これから、このコラムで、いろいろな角度から書店を見つめ直していきたいと思う。よろしくお願い致します。 (次回に続く) 青田恵一(あおたけいいち)氏の略歴 八重洲ブックセンター、ブックストア談などで書店実務を経験。 現在、青田コーポレーション代表取締役。中小企業診断士。 書店経営コンサルティング・店舗診断・提案・研修指導。 著書に『よみがえれ書店』『書店ルネッサンス』『たたかう書店』『棚は生きている』がある。 発行元:青田コーポレーション・発売元:八潮出版社 注文先:青田コーポレーション Fax注文書:注文書(pdf/220KB) 発行:2003年10月30日 本体価格:2,000円・276頁 このページの著作権は青田恵一 が保持しています。 |