青田恵一の現代書店学 『よみがえれ書店』『書店ルネッサンス』『たたかう書店』 青田コーポレーション代表 青田恵一 「出版ニュース」コラムより 3.『たたかう書店 ―― メガ・ブックセンターの時代に』
万引きの件で主張したのは、予防に徹すればいいような温和なスタンスでは、これはとてもなくならないということ。少なくとも、万引きを「職業」とするプロ、もしくはセミプロは、断固として逮捕しない限り、自然に消えていくというものではない。書店はとくに万引き倒産が多い。 さまざまな困難を乗り越えつつも、この課題にいかに立ち向かうか、書店の経営に対する覚悟が問われている。 新古書店への対策についても、店舗マーケティングの角度から詳細に論じた。新古書店も、とくに店頭では、多くの悩みと問題を抱えているにちがいない。だが、現に読者が流れている以上、店舗という舞台で遠慮するわけにはいかない。それぞれの店の持つ強みと弱みを見極めながら、堂々と真正面から闘いたい。もっともこれは、同業の競合店に対しても同じだが。補論として、ジャンル別の対策を追加した。 つぎの「ジャンル別マネジメント」は、店舗だけでマネジメントを組む書店には、効果を持つ可能性を秘めている。書店が、ジャンルというテナントで成り立つショッピングセンターなら、チェーンとして、一つひとつのジャンルをていねいにマネジメントすれば、業績も上がるはずだ。 もっとも、そのためには、高いノウハウを持ち、すべての活動を的確に進めねばならない。このノウハウと方法、進め方を、試論として述べた。 さいごは、責任販売について。この案だけが正しいとは、もちろん夢にも考えていない。だが、責任販売のテーマは全体像が見えにくいうえ、「実現可能性」の問題もある。いかに正しくても、できないものはできないという現実があることも、無視しがたいところだろう。といいながら、その「実現可能性」が高い提案にどこまで迫れたか、自信があるわけではない。せめて、責任販売とはなにかを探る“魚”になればと思っている。もっとも基本スタンスは、はっきり述べたつもりだ。責任販売の“被害者”はどうしても書店となりがちだが、そうであってはならない、と。 責任販売とは、読者、顧客に対する共同責任を、業界三者がどう果たすかという課題だととらえたい。 顧みて想う。なぜ『よみがえれ 書店』シリーズを書いたのか? 書店は、とくに一部の店では、システム化、管理化、チェーン化、大型化などが急激に進んだわりに、というより、反比例するように、読者視点、現場発想が希薄になりつつある。この3部作は、一方で、いかにそれを店頭に取り戻せばよいかを追いながら、もう一方では、危機に立つ書店、そのなかで苦闘する書店人の充実した生活を願って、書き継いできたものだ。書店だけでなく、取次会社、出版社、また印刷会社、製本会社、デジタル企業の方々が、未来志向で出版業界を考えるとき、わずかなりとも参考になればと思う。 青田恵一(あおたけいいち)氏の略歴 八重洲ブックセンター、ブックストア談などで書店実務を経験。 現在、青田コーポレーション代表取締役。中小企業診断士。 書店経営コンサルティング・店舗診断・提案・研修指導。 著書に『よみがえれ書店』『書店ルネッサンス』『たたかう書店』『棚は生きている』がある。 発行元:青田コーポレーション・発売元:八潮出版社 注文先:青田コーポレーション Fax注文書:注文書(pdf/220KB) 発行:2005年9月15日 本体価格:2,200円・276頁 このページの著作権は青田恵一 が保持しています。 |