青田恵一のお勧めの一冊 下村彦四郎さんの『棚の生理学』シリーズの原点(1) 「新装版/書店はどうすればよいのか」 下村彦四郎 著 書店人の実践的書店論
他のテーマもおもしろい。「流通革命がやってきた」「書店文化を促進するペーパーバックス」「伸び悩む老舗書店」といった項目には、誰もが、つい、現代を連想してしまうだろう。もちろん時局がらみの話題もある。だが、実務の分析を通した未来への指針もちりばめられ、書店を愛するその真剣な議論には迫力すら感じられる。 長年絶版だったこの『書店はどうすればよいのか』は、40年の時を超え、つい先月、新装版として復刊された。復刊をここまで運んだのは、出版メディアパルの下村昭夫さんである。下村彦四郎さんとは、苗字は同じでも血縁関係はない。同じ職場 ―― オーム社の先輩後輩の間柄だった。 『書店はどうすればよいのか』は、夏に復刊した『棚の生理学』を含めた3部作の第2弾に当たる。このシリーズを復刊しても、21世紀の現在、果たしてどこまで読まれるか、その不安が無かったはずはない。そのとき下村昭夫さんの胸を去来したのは、おそらく、日本初の書店本を、みずから著し、みずから発行した下村彦四郎さんの勇気だったにちがいない。こうして、ふたりの下村さんの勇気は、書店再生への祈りを込めて、この3冊の本に結晶することとなった。第3弾『書店の人と商品をどうするか』は、12月に刊行される予定。 オーム社で編集を担った下村昭夫さんは、定年後に出版メディアパルを作り、いまはその編集長。自分が書いた原稿を自分で編集し、かつ発行している。下村彦四郎さんと同じスタイルだ。 これまでの1年半に刊行した商品は、8点。出版関係のデータなら何でも分かる『絵でみる出版産業』、昨年の「出版ニュース」「新文化」などに掲載された記事で出版の将来を展望する『出版の近未来』、これさえ分かれば本が作れる『本づくり これだけは』。この『本づくり これだけは』については、ビデオ版もある。このドラマ仕立てのビデオは、編集のビギナーや希望者にとり、もってこいの教材となるだろう。最新刊は、「毎日新聞」の一年半にわたる連載コラムを総結集した『出版ウォッチング』で、直近の出版動向がコンパクトにつかめる好著。これらの商品は、全国の書店で入手できる(地方・小出版流通センター扱い)が、直接購入も可能だ。 下村昭夫さんは、下村彦四郎さんの後を継ぐかのように、培ってきたノウハウの提供を惜しまず、セミナーを盛んに行っている。さらに、多くの出版人に呼び掛け、10年間で50冊の出版本を刊行するという壮大な計画さえある。 ―― ふたりの下村さんの勇気を、出版業界は見過ごしてはならない。 (『棚は生きている』より 出版ニュース 2004年11月中旬号掲載) 申込先:〒272-0812 市川市若宮1-1-1 出版メディアパル Tel&Fax:047-334-7094 Email;出版メディアパル 発行:2004年8月15日 本体価格:2,400円・208頁 このページの著作権は青田恵一 が保持しています。 |